一般的には、チップ部品(SMD部品)は手はんだ付けすることはありません。
量産品では、クリームはんだ印刷機とチップマウンター、りフロー炉からなる
自動はんだ付けが 一般的です。

同じ基板と同じ部品を同じ条件で多量に製作するには、自動機による実装が
同じ品質の良いものを製作できてコストも安く抑えることが出来ます。

しかし、試作や開発の段階で製作する基板の枚数が少ない場合は、
自動機によるはんだ付けの利点が失われます。

① まず、基板を数枚しか実装しないのにクリームはんだ(ペーストはんだ)印刷機の
マスクを製作する必要があり、試作により基板の変更がある場合には、
その都度作り直す必要があります。
(その都度コストが掛かります)

メタルマスク サンプル
※ステンレス製メタルマスクの例
はんだを印刷する部位をレーザーカットして抜いてある(精度が必要)


② 次に、チップマウンターを使って電子部品を印刷されたペーストはんだの上に
並べるには、部品の位置を座標化して極性などをすべてプログラムしておく必要が
あります。数枚の基板のためにプログラムを入力するのは、基板1枚当たりの
プログラム工数を考えるとコストは割高になります。

③ チップマウンターを使用するためには、部品をリールで購入する必要があります。
表面実装用の電子部品は1リールに1,000~10,000個がテープ状に巻かれています。
数個の電子部品しか必要ないのに基板に実装する電子部品を1リールづつ購入するのは、
無駄が多すぎます。

④ リフロー炉ではんだ付けの温度条件を決定するには、温度条件出しのために
何度かテストを行う必要があります。試作の基板が数枚しかなければ、条件出しが
完了する前の不完全な条件でリフロー炉によるはんだ付けを完了させることに
なってしまいます。


以上の①②③④の不利な点を考慮すると、試作や開発のための少数の基板に
チップ部品(SMD部品)を実装するには、ハンダゴテによる手実装という
選択肢も有力になってきます。
(手実装であれば、WEBショップで購入したバラ部品も使えます)

ただし、部品メーカーは「ハンダゴテによる手実装を行った場合には、
部品の品質保証は出来ない」と謳っているところも少なくありません。
これは、ハンダゴテによる手実装では、はんだ付けの温度条件が
作業者のはんだ付けスキルによって大きく変わってしまうためです。

逆に言うと、手実装のはんだ付けスキルが十分に高い作業者であれば、
手実装を行っても問題ないということです。

実際、弊社では、リフロー炉による実装では壊れてしまうLEDを
手実装で100%壊さずに実装することが出来てしまいます。

そのためには、ハンダゴテのコテ先の熱をどこから基板のランドや
電子部品の端子に伝えて、どこへ逃がすか?
といった、目に見えない熱のコントロールが必要になります。


例えばチップ部品(表面実装1005)の手実装について手順を説明しますと・・

 
  • チップ部品を半田付けする基板パターンの1箇所(端子が多い場合は2箇所)
    に微量の予備半田をする。

  • チップ部品をピンセットで摘まみ、正しいチップ搭載位置に運びます。
    この時、極性や表裏のある部品は注意します。

  • 予備半田に半田コテ先を当て、予備半田を融かしながら
    ランドにチップを正確に載せ、予備半田によって仮止めします。
    (チップにコテ先が触れる時間は1秒もありません)
    (位置修正があれば、この時点で行ないます。)
    ※融かした予備はんだに滑り込ませるように置くとチップが浮きません。

  • フラックスを微量づつ仮止めした予備半田と、その他の端子と
    ランドに塗布します。これは、予備半田に含まれるフラックスが
    極微量のため、位置決めの間にフラックスが蒸発してしまっているためと、
    チップ部品の電極が酸化している場合に、
    フラックスの力を借りないと極少量の半田では接合できないためです。

  • 予備半田してある箇所以外の端子のはんだ付けを行ないます。
    (この時もチップにコテ先が触れる時間は1秒程度)

  • 予備半田してある端子を再度はんだ付けを行ない仕上げます。
    (この時もチップにコテ先が触れる時間は1秒程度)

  • 顕微鏡にて出来栄えを確認します。
  • 必要があれば、フラックスをIPAなどで洗浄します。

    こうして実装したチップは部品自体の温度が280℃までに抑えられて
    安全にはんだ付けされます。

    2023年1月30日に更新
 

 

0603,0402,0201などの小さいチップ部品では顕微鏡を使って半田付けしますが、
これは部品が肉眼では見えないのはもちろんですが、
はんだが融けていく様子を観察しながらはんだ付けしたいためです。

 

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