コテ先が酸化しているとコテ先の熱を上手く伝えることが出来ません

ハンダゴテを使ったはんだ付けで、道具面で最も大事とも言えることは、
「コテ先がはんだに濡れる」ことです。

はんだ付けの実技講習の際にも、私が最も注視しているのはコテ先の状態です。
というのも、コテ先温度を適切に管理していても、コテ先は高温になりますので、
大気に触れているとどうしても酸化してしまうからです。

※従来の鉛入り共晶はんだを使用している際は、
 鉛に酸化を防ぐ効果があったようですが、
 鉛フリーハンダを使用する際には、酸化の進行が格段に早くなります。

コテ先が酸化すると、はんだや母材への熱が著しく伝わりにくくなりすので、
せっかく高性能なハンダゴテを用意しても、その性能を発揮することが出来ません。
したがって、はんだ付け作業に携わる人は、常にコテ先が酸化していないか
気を配っておく必要があります。

ところが、この重要性について学ぶ機会、知る機会はなかなかありません。
コテ先が濡れることで、ハンダ量調節やはんだの表面張力を使ったいろいろな
テクニックを使うことが出来るのですが知る人は少ないです。

では、酸化したコテ先とは? 良い状態のコテ先とは?

また酸化してしまったコテ先は、どうやって修復すれば良いのでしょうか?

動画をご覧いただいたように、酸化したコテ先は、糸はんだを触れても融けません。
なんとか融かすことに成功しても、はんだを弾いてしまうため、水玉のような
形状になってしまいます。

酸化したコテ先

水玉のようにハンダを弾く


対して、酸化していない良い状態のこて先は、糸はんだが触れるだけで融けて、
コテ先全体に薄く濡れ広がるのがわかるかと思います。

良い状態のコテ先

ハンダが薄く濡れ広がる


この状態でハンダゴテを使用しないと、適正な温度条件ではんだ付けできないため、
きれいなフィレットは形成されませんし、イモハンダになる可能性は高くなります。

良いコテ先の状態を保つためには、
はんだ付け作業の際に気をつけておくことがあります。
それは、コテ台にハンダゴテを置く際に、コテ先を溶融はんだで覆っておくことです。

こうすることで高温になったコテ先が、大気に直接触れることが無くなり、
酸化を防ぐことが出来ます。
(電源を切ってしばらく使わない場合でも、大気と触れないようコテ先をはんだで覆っておくほうが良いです)

はんだで覆ったコテ先


ところが、理屈ではわかっていても、きれい好きな人は日頃から
コテ先をきれいに掃除してからコテ台に置く習慣がありますので、
なかなかこの動作が身に付きません。
ついつい、コテ先を保護しないままハンダゴテをコテ台に置いたままにして、
コテ先を酸化させてしまいます。

コテ先が酸化してしまった場合には、酸化の度合いに応じて酸化膜を除去する方法があります。

軽度の酸化であれば、動画のようにコテ先に太目の糸はんだ(φ0.6~1.0mm)を
多めに供給してはんだを融かし、コテ先をはんだで覆った後、スポンジで拭うことを何度か繰り返せば、
コテ先のはんだメッキを復活させることが出来ます。

中程度の酸化膜の場合は、コテ先の酸化膜を化学的に除去するコテ先復活剤
(ケミカルペースト FS100-1など)を使用して、酸化膜を除去します。

使用方法は、
① 写真のようにコテ先をペーストに突き刺し、コテ先にペーストを付着させます。
② すかさず、図9のようにコテ先に太目の糸はんだ(φ0.6~1.0mm)を多めに供給して
  はんだを溶かし、コテ先をはんだで覆います。
③ 余分なはんだをスポンジで拭って掃除します。(図6参照)
④ 一度でコテ先のはんだメッキが復活しない場合は①~③を繰り返します。

ケミカルペースト


強固な酸化膜が形成された場合は、上記の方法では酸化膜を除去できません。
金属製のスケールやカッターの刃の反対側などを使って、酸化膜をコソゲ落とします。

その上で、軽度な酸化膜を除去した時のように、コテ先に太目の糸はんだ
(φ0.6~1.0mm)を多めに供給してはんだを溶かし、コテ先をはんだで覆った後、
スポンジで拭うことを何度か繰り返すことで、コテ先のメッキを復活させることができます。

360℃の壁
コテ先の酸化膜は、360℃を超えて形成されると除去が難しくなります。
コテ先温度は340℃程度に抑えて設定して使用するのが、
コテ先復活の作業中断が少なく、良い状態のコテ先を保ちやすいので、
品質も良くなりやすいです。


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