一般的に「ハンダ」と呼ばれるハンダは、錫(スズ、Sn)と鉛(なまり、Pb)が
約6:4の比で混ざってできた合金です。(共晶はんだと呼びます)
ホームセンターなどで購入できるハンダで
Sn60/Pb40などと記載されているものはこちらのハンダです。

(写真1)HOZAN H-712と 
千住金属工業スパークルRMA98スーパーの例 共晶はんだ

共晶ハンダが融ける温度は約183℃で、金属にしては非常に低い温度で
融かすことができます。
人類は、このような金属の存在を紀元前3,000年頃(5,000年前)には、
知っていて実際に活用していたと考えられています。
エジプトのピラミッドやギリシャのローマ時代にも
ハンダ付けの記録が残っており、日本でも、平安時代に記述が存在します。 
こんな昔から利用されてきたハンダですが、現代の最先端エレクトロニクスでも、
まだ現役で便利に利用されています。

●共晶ハンダの使い分け

共晶ハンダは、組成を変えることで融点(ハンダが融ける温度)を
変えることが出来ます。

・高温ハンダ 

(写真2)千住金属工業 高温スパークルはんだ

 鉛の含有量を増やすことで融点を高くしています。
#250、#315などと表示され、それぞれ融点が250℃、315℃に
調整されたものです。
高温の環境で使用される電子部品などに使用されます。

・低温ハンダ 



(写真3)サンハヤト 表面実装部品取り外しキット


共晶ハンダに、ビスマスやクロムあるいは、カドミウムなどを添加して、
融点を下げたハンダです。例えば、100℃程度で融けるはんだを使用すると、
電子部品や基板を損傷することなく部品を取り外すことが出来ます。
ただし、どちらのハンダも接合強度や毒性などの面でオリジナルの
共晶はんだには劣りますので、通常の電子機器には積極的に
使用されることはありません。

・ステンレス用はんだ

また、一般的にステンレス用として販売されているハンダも共晶ハンダであり、
ステンレス表面の酸化膜を除去するための強酸性のフラックスを併用することで
ハンダ付けを可能にしています。
(ハンダ素材は同じもの。共晶はんだです)


(写真4)HAKKO サスゾール ステンレス用フラックス


●鉛フリーはんだ(Pbフリー)


電子機器は、長年埋め立て廃棄処理されてきましたが、
酸性雨により鉛成分が地下水に溶け出して
環境(人体にも)に悪影響を及ぼしているとの報告が世を騒がせました。
この対策として急遽登場したのが鉛フリーハンダです。
鉛フリーハンダが使われ始めてから、まだ20年程度です。

各はんだメーカーは、このビジネスチャンスに、競って鉛を使用しない
ハンダの開発に取り組みました。
(先に素材、組成の特許を押えれば莫大な利益が転がり込みます。
現在でも特許戦争の様相を呈しています)

ところが肝心の信頼性についてはテスト期間がほとんどありませんでしたので、
見切り発車気味のまま、何種類もの鉛フリーハンダが市場に投入されました。
このため、鉛フリーはんだの導入初期には、誰もが初めて経験する
不具合が頻発することになり、
「鉛フリーはんだを使ったはんだ付けはとても難しい」という
イメージが定着しました。

しかし、徐々に比較的扱いやすくて、品質的にリスクの少ないハンダに
次第に需要が集まり、現在日本では、大きく分けて2種類の鉛フリーハンダが
多くの企業で採用されています。

・錫銀銅 【Sn-Ag-Cu】(すずぎんどう)の組成は
Sn96.5% Ag3% Cu0.5%です。

(写真4.2)千住金属工業 エコソルダー M705

・錫銅ニッケル 【Sn-Cu-(Ni)】
(すずどうにっける)の組成は
Sn99% Cu0.7%+(Ni)その他添加物です。

(写真4.3)日本スペリア社 SN100C
いずれもほとんどがSn(すず)で出来ており、融点は217~227℃程度です。
(組成によって融点が若干異なる)

鉛フリーハンダにも組成を変えることで融点をコントロールした
ハンダがありますが、現在のところ高温ハンダはまだ存在しません。
(高温ハンダだけはRHOS対応外です)

・鉛フリー低温ハンダ

(写真5)(千住金属工業 低温ヤニいり糸はんだ LEO 鉛フリー)
Snにビスマスを添加した低温ハンダが開発されており、
最近ではレノボ(PCメーカー)からその実装技術が発表されています。
(※融点は約140℃)


・鉛フリー ステンレス用ハンダ
共晶ハンダと同様、フラックスに強酸性のものを使うことによりハンダ付け可能です。
(ハンダ素材は同じものです。鉛フリーSn-Ag-Cu)

 

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