はじめに・・で、

「はんだ付けが上手にできないのは腕のせいだ」と思い込んでいないでしょうか?」
というタイトルが出てきましたが、実は、はんだ付けの出来栄えの良し悪しは
ハンダゴテを選んだ時点で、ほとんど決まってしまいます。

私の元に寄せられる「はんだ付けが上手にできない!」という相談の大半は、
ハンダゴテ選び、コテ先選びが誤っていることが原因です。
(コテ先選びは後述します)

2021年現在、企業さんへ出張講習に行くと、現在でもコテ先温度をコントロールできない
ニクロムヒーター式や、セラミックヒーターのハンダゴテを使用されている場面に
出くわします。

理由を尋ねると「予算が無かったから・・」「昔からこれを使っているから・・」
「ホームセンターにあったから・・」といったものが多いです。

はんだ付けの品質を直接左右するハンダゴテなのに、
予算を確保しないということは、ハンダゴテの重要性が
まったく分かっていないということです。

日本を代表するような大学や、最新の設備を備えたメーカーでも
上記のようなことが少なからず起こります。
(むしろ多数派です)

残念ながら、こうした旧式のハンダゴテでは、現在のように小型化、密集化した
電子部品を正常にはんだ付けすることはできません。
というのも、こうした旧式のハンダゴテは、コテ先温度がヒーターの最大出力まで上がってしまうからです。

先日の講習会でも
いろいろなハンダゴテのコテ先温度を実測したのですが、
なんと550℃の温度を叩きだしたすごいハンダゴテもありました。

こういうハンダゴテは、電源を入れた時点で
既にコテ先が赤や紫の酸化膜に覆われており、ハンダを弾くばかりでなく、
一瞬でフラックスが蒸発して焼けてしまうため
まともなハンダ付けはできません。

前述した良好な合金層を作り出すことができません。

実は一般の人は、目にする機会が無いと思いますが、ハンダゴテメーカーは、
実にたくさんのハンダゴテを開発しています。
(日本では、HAKKO、GOOT、BONKOTEなど)

本来、自分のハンダ付けの用途、対象物に合わせてハンダゴテを選定し、
さらに、コテ先の形状を選んでいくのが正しいありかたです。

ところが現状は、こうした選び方をできる人・・というのは、
かなり少なくて、たいていは、

1:ホームセンターに並んでいる中から、良さそうなものを選ぶ
2:工具屋さんや商社さんに勧められるまま
3:お客さんが指定している
  (お客さんも実はわかっていないことが多い)

・・のではないでしょうか。

こうした環境に置かれているハンダ付け業界の根本的な原因は、
「はんだ付けに対する正しい知識」の啓蒙不足にある。
と私は考えています。

世間のハンダ付けに対する知識というのは30~40年前から変わっていません。
このため、せっかくハンダゴテメーカーが、いいハンダゴテを作って
店頭に並べても、お客さんに「良いハンダゴテ」に対する知識が無いために
安いハンダゴテしか売れません。

そこでハンダゴテメーカーは商社さんを通して、
電機メーカーへ売り込むわけですが、ここでも通常商社マンには、
ハンダ付けに対する教育は行われていませんので、
販売の際にハンダ付けの本質的な話をする機会はありません。

また、最近では電機メーカーでもハンダ付けに対する教育が
施されている所は少ないです。
さらに、学校教育の場では「ハンダ付けとはなんぞや?」ということを
教えてくれるところはほとんどありません。
(先生方自身も勉強する機会がない。)
この背景には、「ハンダ付けの教科書がない」という一面もあります。
(あっても、発行が30年前だったり、絶版になっていたり)

ハンダゴテはこの数年で大きく進化しています。
昔のように部品が大きくて、金物端子が主流だった時代は
なんとかなりましたが現在のように、部品が小型化し密集した上、
熱に弱い電子部品などが使われている基板に昔のハンダゴテを使うのは無理があります。
オリンピックのマラソン競技にゴム長靴を履いて出場するくらい無理があります。

ここで、はっきり断言しますが「温度調節機能つきのハンダゴテ」を
選ぶようにしてください。そして、コテ先温度は340℃程度に調整して使用したほうが良いです。
最近では、電子部品の小型化が進み、基板の集積度も増しています。
さらに基板は集積度を増すために、片面基板から、両面、多層へと変化しています。

 


※多層基板=パターン回路(銅箔)をサンドイッチのように重ね、
スルーホールと呼ばれる穴の内壁の銅箔によって
各層の回路を接続して回路を形成している。

 

(部品サイズがボールペン先端のボール程度に・・)



このため、基板はその内部にも回路となる銅箔を含んでいるため、
はんだ付けの際には、大きな熱容量が必要となってきています。

逆に電子部品は、小型化して密集しているために、
大きなコテ先ではハンダ付けできなくなってきています。

大きな熱容量が必要なのに、大きなハンダゴテ(コテ先)が使えない

という矛盾した条件が、はんだ付けに求められるようになってきています。


最近の基板と電子部品は前述のように変化してきており
電子部品と基板の熱容量の差が極端に大きくなっています。

多層基板で、はんだ付け部の温度を250℃まで上げるためには、
ハンダゴテとコテ先の選択がもの凄く重要になってきます。

まして、部品が小さくてコテ先との接触面積が小さくなってますから
なおさら、条件は悪くなっています。

 ※現在ではamazonでかなり安くハンダゴテが販売されるようになりました。
  しかし、実際に購入してみると、残念ながら温調付きというのは形だけで
  実際にはんだ付けするには不向きなハンダゴテも多々あります。
  現在は、玉石混合状態なので、選ぶのが非常に難しい状況です。

  それでも、温調無しから比較するとはんだ付けしやすいのは確かなので
  評価は高くなる傾向にあります。しかし、本当に良いハンダゴテは、
  劇的にはんだ付け性を向上します。


一般の方が、趣味でハンダ付けされる場合ならベースとなるハンダゴテは
このクラスのもので十分であると私は考えています。

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また、はんだ付けの対象物によってコテ先を交換するために、交換用のコテ先のことを考慮して
購入先やメーカーを選択する必要があります。

というのも、ハンダゴテ本体を店頭やWEBSHOPで安く購入できたとしても
交換用のコテ先や保守部品が手に入れられないようでは
ハンダゴテの能力を10%も引き出すことはできないからです。

2021年現在、日本製のハンダゴテのお薦めは、

コテ先交換が簡単で、パワーもあり、価格的にもコストパフォーマンスが高い、
GOOT製のRX-802ASだと考えています。
(電源ON後、約6秒で350℃に到達します)


※RX-802AS(goot製)

このハンダゴテ、iphoneの製造ラインにも導入されており、
スティーブ・ジョブズが絶賛したという逸話があります。

※あくまでも2021年現在ですので、また各社新製品を投入されると思います。
 その時は、記事を更新します。


一般の方で趣味ではんだ付けされる方で「結局,何選んでええかわからんわ!」という方は、こちらをどうぞ・・  
必要なものは全て揃っています。(このハンダゴテは新しいです。2021.4.7現在)
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熱容量という言葉について

よく使われる言葉で、「容量の大きいコテ」などという風に
省略したりして使われます。

物理用語ですが、簡単に言うと熱を水などと同じように、
量(体積)として考えよう・・としたものです。
イメージ的には、シャープペンシルの芯という入れ物には、
熱をお湯と仮定した場合ほとんどお湯が入らないので、
熱容量が小さいと言えますし、10cm角の鉄の塊であれば
10cm角の入れ物にならお湯がたくさん入りますから、
熱容量が大きいと言えます・・。

例えば、お風呂に入った水をこれから半田付けをしたい母材とします。
ここへ熱湯を注いで、お風呂の湯を温めようとするわけですが、
熱湯の入ったヤカンを半田コテだと思ってください。

ここで、お風呂の持つ熱容量はお風呂の大きさに比例します。
小さいお風呂なら、少しの熱湯で温まりますし、大きなお風呂なら
多量の熱湯を注がなければ水は温まりません。

また、ヤカンの持つ熱容量もヤカンの大きさに比例しており、
大きなヤカンなら多量のお湯を注ぐことが出来ます。

一般的に熱容量の大きい物は、熱しにくく冷めにくいですし、
熱容量の小さいものは瞬時に熱くすることができますが
冷めるのも早いです・・。

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