659f1ca4.jpgこんにちは、はんだ付け職人です。

先週に引き続き「ハンダゴテの選び方」についてのお話です。

語弊を恐れず言いますと、「温度調節機能つきのハンダゴテ」を
選ぶようにしてください。そして、コテ先温度が350℃近くに調整
できたほうが良いです。

最近では、電子部品の小型化が進み、基板の集積度も増しています。
さらに基板は集積度を増すために、片面基板から、両面、多層へと
変化しています。

 ※多層基板=パターン回路(銅箔)をサンドイッチのように重ね、
       スルーホールと呼ばれる穴の内壁の銅箔によって
       各層の回路を接続して回路を形成している。

このため、基板はその内部にも回路となる銅箔を含んでいるため、
ハンダ付けの際には、大きな熱容量が必要となってきています。

逆に電子部品は、小型化して密集しているために、大きなコテ先では
ハンダ付けできなくなってきています。

大きな熱容量が必要なのに、大きなハンダゴテ(コテ先)が使えない
という矛盾した条件が、ハンダ付けに求められるようになってきてい
ます。

従来の温度調節機能の付いていない「温度飽和型」と呼ばれるハンダ
ゴテは、発熱量が大気中へ逃げる放熱量とつりあう450℃~520℃程度まで
コテ先温度を上げています。

このコテ先を、母材と糸ハンダに触れることにより(母材と糸ハンダへの
放熱とハンダの溶解熱)一時的にコテ先温度を下げて、ハンダ付けに最適な
250℃という条件を数秒間作り出してきました。

このためには、母材とコテ先の接触している面積を大きくしてやって、
母材への放熱量を確保してやることや、コテ先を当てている時間を
ベテランの勘によりコントロールすることが必要です。

ところが、最近の基板と電子部品は前述のように変化してきており
電子部品と基板の熱容量の差が極端に大きくなっています。

多層基板ではスルーホールを介してしかコテ先の熱が伝わらないために
裏面のパターンの温度を250℃まで上げるためには、かなりの時間が掛かる
ようになってきています。

まして、部品が小さくてコテ先との接触面積が小さくなってますから
なおさら、条件は悪くなっています。

こうなると、「温度飽和型」のコテ先温度が450℃~520℃もあるハンダ
ゴテを使うとどうなるかというと、ハンダ付けに最適な温度条件を
作り出す前に、こて先温度が飽和温度に近い温度まで戻ってしまいます。

電子部品の耐熱温度は300℃程度のものが多いですから、まず電子部品が
危うくなります。また基板もこれほどの高熱になると損傷しやすくなります。

さらに、コテ先には酸化膜が覆いますから、さらに熱が伝わらなくなり
「おかしいな?」と感じた作業者はコテ先をゴネゴネ・・と動かします。

こうして、ハンダ付け対象物を破壊するリスクが高くなります。

また、それを避けるために、早い時間でハンダ付けを修了させようとすると
ハンダ量が多くなり、熱不足のいわゆるイモハンダと呼ばれる不良が
発生しやすくなります。

これらのことを総合して考えると、特に初心者の方は「温度調節機能つき
のハンダゴテ」を選ぶようにしたほうが良いですね。

初心者=安物 という公式はスポーツでも当てはまりません。ゴルフでも
スキーでも、昔の道具は難しかったですが、今の最新の道具を使えば
最初からそこそこ楽しむことができます。

・・というわけでこの話長くなりそうです。
しばらく連載させていただきます。すみません。


では、明るいハンダ付けを!