64251d45.jpgこんにちは、はんだ付け職人です。

今週は、鉛フリーハンダの材質についてのお話です。

現在日本で一般的に使用されているものは2種類です。いずれも錫(Sn)
が96%以上を占め、融点を下げたり、濡れ性、粘りを弱くするために
微量に他の金属が混ぜられています。

ひとつは、錫 銀 銅(Sn-Ag-Cu)と呼ばれる、現在日本で最も
多く使われている鉛フリーハンダです。
(Sn約96.5% Ag約3% Cu約0.5%その他 微量元素)

鉛フリーハンダが開発されていく中で
比較的早期に濡れ性や安定性に優れていることが認められたものです。

このため、なるべく早く鉛フリーハンダを導入したい多くのメーカーが
この組成のハンダを導入しました。日本の大手メーカーの7割くらいが
この錫 銀 銅(Sn-Ag-Cu)を量産品の使用に指定しています。

ただし、最近では素材の金属の価格が上昇しており、特に希少金属であ
る銀が含まれているため、非常に高価になってきました。


もうひとつは錫 銅(Sn-Cu)と呼ばれる鉛フリーハンダです。
錫 銅 +α組成ハンダ 【Sn-Cu-(α)】といって他の微量元素を
加えることで、濡れ性や流動性、光沢などを改善しています。
(例:錫 銅 ニッケル・ゲルマニウム【Sn-0.7Cu-0.05Ni+Ge】

一般的に錫 銅(スズドウ)と呼ばれる場合でもこちらのα組成ハンダ
のことを呼んでいる場合がほとんどです。

錫 銅 ニッケルや 錫 銅 ニッケル・ゲルマニウムなどα組成部の
名前を付けて呼ばれる場合も多くなっています。   

前述の錫 銀 銅(Sn-Ag-Cu)に比べると少し後発であったため
導入比率は大きくありませんが、最近では、銀の価格が上昇しているこ
ともあって錫 銅(Sn-Cu)ハンダを導入するメーカーが増えつつ
あります。   


こういった、ハンダの組成についてはメーカーの特許が有効となってお
り他のメーカーは単純に真似ができなくなっています。このため、まだ
共晶ハンダのように自由な競争は行われておらず、電機メーカはハンダ
メーカーに主導されて鉛フリーハンダを導入している状態です。

(最近では、なんとかこの特許を避けようと、これらの基礎組成を外し
た低銀ハンダなども出てきていますね。)

どちらの組成の鉛フリーハンダもフラックスの改善などが日進月歩して
おり、濡れ性や信頼性などがどんどん改善されてきています。

私の感覚でも、道具をきちんと選んでやれば共晶ハンダと遜色ないほど
に良くなってきています。

しかしながら、いったんISOなどで定められた規定を変えるにはかな
りのエネルギーを必要とするため、良いとわかっていても新しい製品に
代えることは難しい状況です。
(信頼性試験のデーターなどを要求されますので・・)

鉛フリーハンダの信頼性については、まだちゃんと証明されたわけでは
ないわけですから、せめてこの2種類の基礎組成の鉛フリーハンダにつ
いては新しいものをどんどん使わせて欲しいなあ・・というのが私達現
場の意見ですね。

それにしても、ハンダの値段上がりましたね。2年前の2倍以上になっ
てます。「たくさん買っときゃ儲かったな・・」と思うのは私だけでは
ないでしょう。


では、明るいハンダ付けを!