こんにちは、はんだ付け職人です。

今日は、はんだ槽の成分分析を依頼する際の
試料の採取方法についてのお話です。

静止はんだ槽やはんだポット、噴流はんだ槽では、
定期的に、はんだに含まれる不純物や、錫や銅成分の比率を
調べるために成分分析を実施されていると思います。

たいていの場合、小さなヒシャクのような器具を使って
溶けたはんだをすくい取って採取し、
(カキ氷のシロップを掛けるような金属製のヒシャク)

写真のような金属の器にはんだを流し込んで
試料とされていると思います。
//k.d.cbz.jp/t/7a06/a0a0jqv09iv6a9zucw
ところが、この試料の正しい採取の方法については、
案外ご存知ない方が多いのではないでしょうか?

まず、はんだは加熱して溶かしても水溶液のようには
対流しませんので、重い金属は下に沈む傾向にあります。

例えば、共晶はんだでは比重の重い鉛は下部に集まり、
上層部は錫(スズ)成分が多いはんだとなります。

特に、いったん溶解した後に、自然冷却して固化した場合は、
鉛と錫の融点が異なることから、分離して固化しています。

鉛フリーはんだでも、比重の高い金属は下のほうへ集まっています。

このため、試料を採取する際は、噴流槽なら、噴流を揚げた状態で、
また、静止槽やはんだポットの場合は、よく攪拌してから
試料を採取しないと、正しい成分分析ができません。

さて、ここまでは私も理解しておりましたが、
田中和吉先生の著書には、逆に攪拌しすぎた場合の
害について書かれています。

はんだ槽の底には、はんだ中に食われた銅成分と錫とが結びついたもの
(銅と錫の合金)が堆積しており、

はんだ層を攪拌しすぎると、この堆積物が巻き上げられて、
銅成分がやたら多い試料を採取することになります。

はんだ槽の底に堆積した銅、錫の化合物を動かさないように
静かに採取するように・・とおっしゃっています。

攪拌しすぎてもいけないわけですね。

「じゃあ、どうすんねん?」
という声も聞こえそうですが、試料採取の際には、

上記のようにかき混ぜすぎに注意して、
いつも同じ程度に、静かに攪拌するのが正解だと思います。

(攪拌の方法、程度が変わると成分分析の数値もかわってしまうため)

では、明るいはんだ付けを!