こんにちは、はんだ付け職人です。

今日は、ともすれば、見落とされがちな、
はんだポットを使った予備はんだの問題点についての
お話です。

「はんだポット」がイメージできない方に・・
//k.d.cbz.jp/t/7a06/a0vuj3v08i4fkrvc00(はんだポットの例)

私も、はんだポットを使っていて
「あれ?なんでやろ?」と

経験的に感じていたことだったのですが、

例によって田中和吉 大先生の著書
はんだ付け作業のトラブル対策【日刊工業新聞社】 (1984/01)
の中に解説を見つけてしまいました。


予備はんだは、これからはんだ付けしようという金属表面に
あらかじめ均一な合金層を作っておいて、

本番のはんだ付け作業の時間を短縮し、
きれいなはんだ付けを行うためのものです。

たとえば、接合しようとする2つの母材に、
大きな熱容量の差がある場合には、

予備はんだが施されていないと、一方は熱不足状態で、
もう一方は、加熱し過ぎでオーバーヒート状態となり、

イモはんだや、ツノなどの不具合が発生しやすくなります。

このため、部品のリードや被覆つきリード線などの芯線に、
はんだポットを使って、予備はんだを施すことはよくあることです。

ところが、時間効率を優先すると、
作業者は、あわただしくリード線の先端に少量のフラックスを付けて

溶けているはんだにリード線を挿入して、引き出して、すぐ終わり・・
という単純作業になりがちです。

こうして予備はんだされたリードをよく見てみると
リード線の先端には、ツブツブが残っていて、
焼けたフラックスもこびりついています。

さらに悪いことには、こうした状態のリード線は、
予備はんだされているにもかかわらず、
はんだの濡れ性が良くありません。

なぜ、こうした現象がおこるのでしょう?


和吉 大先生 曰く、

「リード線表面のはんだ濡れ反応は、溶融はんだの表面から
 数mm程度の深さのところで起こる」


リードの先端に付けたフラックスは、
溶融したはんだに挿入されても、数mmしか持たず
溶融したはんだ表面に浮いてしまう。

数mm以上深く挿入されたリード線は、
はんだが直接リードに接触することになり、

はんだと同温度にまで加熱され、酸化膜が覆う状態となり、
凸凹面に微量付着したフラックスや汚れなどは炭化して
逆にはんだを寄せ付けない状態になる。

良いはんだ付け作業を行うには、
フラックスを少量、リード線の先端に付け、

溶融はんだの表面の酸化膜をワイパーなどできれいに除去した後、
リード線先端を静かに挿入し、この挿入速度は、はんだの濡れを
見ながら行う。

そして、所要の長さを挿入したならば、はんだ表面に浮いてきた
汚いフラックスのない面に移動させて、
即座にリード線を引き上げるのである・・

と解説されています。

いかがでしょう?
適当に溶けたはんだに突っ込んでなかったでしょうか?

こうした作業指導ができていないと
予備はんだをすることで、逆に濡れ性を悪化することにも
なりかねません。

参考になりましたら幸いです。


では、明るいはんだ付けを!