こんにちは、はんだ付け職人です。

先日、11/12の大阪府工業協会でのはんだ付けセミナーで
興味深い話を聞きましたので紹介します。

セミナーで オーケーインターナショナル 三俣さんに
高周波ハンダゴテの紹介と短い講義をしていただいたのですが

はんだ付けが終わったあとの、金属間化合物(SnとCuの合金層)が
環境温度によって成長するというお話がありました。

データーは、JWES資料(日本溶接協会)からです。
//k.d.cbz.jp/t/7a06/90venfy0qgg7o20vr8
はんだ付けは、溶接や接着剤と違って、はんだと銅の間に
合金層を造って接合するんだよ・・というお話は
WEBや書籍、DVDでもよくするところです。

ただし、この合金層はたいへん強いものですが、逆に脆いものなので
合金層の厚さが3~9ミクロン(1.5~3ミクロンの説もあります)
の時に最強になるので、

熱が足りなくても、熱を掛けすぎてもダメですよ・・
と解説しています。

ところが、この合金層が環境温度によって勝手に成長するとなると
はんだ付け後、日数が経つに従って徐々に脆くなっていくことになります。

資料によると、さすがに20℃程度の気温であれば、
ほとんど変化は見られませんが、70℃程度になると
52週(1年)で5ミクロンも合金層が成長してしまいます。

パソコンや、電気製品、自動車などでも
70℃程度の環境温度にさらされるところは多々あります。

さらに、この資料では合金層の成長と共に
この合金とスズや銅の原子の移動により
原子空孔が増加し(カーケンダルボイドと言うそうです)
破断にいたることがある・・と記されています。


ということは、いくら完全なハンダ付けを施しても
比較的高温になる電気製品は、何年か経つと
はんだ付け部分が壊れる・・ということになります。

先だっても、20年、30年も経って使用されている扇風機が
はんだ付け部分から火を噴き火災に至った・・という事故がありましたが
この原因は、こうしたところにあるようです。


こうしたことを考えると、電気製品がなまじ長持ちするのも
良いことではないと言えそうです。

昔の頑丈な電気製品を大事に大事に使用してきても
密かに爆弾が成長していることになります。

電気製品の設計者の方は、こうした事故を防ぐため
わざと10年しないうちに壊れるように
電気製品を設計している・・

といったことを聞いたことがありますが
「ソニータイマー」などの言葉も元々
そうしたものだったのかもしれませんね。


では、明るいはんだ付けを!