こんにちは、はんだ付け職人です。

今日はメールや電話でお問い合わせいただくことが多い
鉛フリーハンダと共晶ハンダ(鉛入り)の使用についての
下記のような疑問について考えてみましょう。

1:部品には、全部鉛フリーのメッキがされているのですが、
  鉛入りの共晶ハンダでハンダ付けをすると強度等に問題がありますか?

2:鉛の体への影響の心配もあって鉛フリーに移行したのですが、
  鉛の影響はそんなにあるものなのでしょうか?

3:鉛フリーに使用していたコテ先を
  そのまま共晶ハンダに流用して問題ないでしょうか?

4:鉛フリーが使われた基板の修理が来た場合、
  そのハンダ付けは共晶ハンダでは行わない方が良いのでしょうか?

まず、結論を言っておきますと
私は、ROHS指令のある国へ輸出するのでない限り
個人さん向けや、試作品などの作業には
鉛入りの共晶ハンダを使います。

鉛フリーハンダの素材は97%はスズです。
残りの3%が銅や銀、その他の添加物になります。

1で言われる鉛フリーのメッキというのは
ほとんどがスズメッキであり、
仮に鉛フリーハンダでメッキが施されていたとしても
97%がスズです。

鉛入り共晶ハンダは重量比で60%がスズですが
メッキ分のスズが増加しても。品質に影響はありません。

同様に、3,4も付着していた鉛フリーハンダを除去すれば、
端子の表面に残ったハンダは、
鉛フリーハンダでメッキしたものと考えることができますので
ほとんど品質に影響を与えることはありません。

(元々、鉛入り共晶ハンダも銅や銀などの不純物を含んでいます。)

また、銀メッキの端子や銅線をハンダ付けしていることから
考えても大丈夫なことがわかります。

さて、2の鉛が体へ及ぼす影響ですが
お医者さんに聞いた話では
医学的には証明されていないそうです。
(換気の良い状態でのはんだ付けに限って言えば)


ただし、電気製品は古くなって使えなくなると、
ほとんどの場合、燃えないゴミとして
埋め立て処理によって廃棄されます。

近年、酸性雨が問題になっていますが、
この酸性雨が地面に染み込んでいきますと、
これらの埋め立てられたプリント基板から

酸性の水が鉛成分を溶出していることがわかってきました。
溶け出した鉛は地下水に入りこみ河川や土壌を汚染していきます。
 
そして、汚染された地下水や河川、土壌からは
飲料水や動植物へと鉛が取り込まれ、
最終的には人体に取り込まれて蓄積していきます。

人体に取り込まれた鉛は、特に胎児への影響が大きく
神経障害、知能低下、成長障害などの深刻な影響を
与えることが知られています。

したがって、大量にハンダを使用するのなら
長い目で見て、鉛フリーハンダの使用をお勧めしますが
個人が趣味の範囲でわずかに使用する程度なら

一般の方が、無理して使う必要はないと思います。
(難しいですしね)

ただし、換気がよいところではんだ付けし、
作業後は重金属用手洗い剤
(アルボースの類)で手洗いブラシを使って手洗いするようにしてください。


ちなみに鉛フリーハンダは、まだ信頼性が疑問視されている面があり
交通、医療、航空、宇宙、電力など人命に関わる分野では
使用が認められていないところがあります。


では、明るいはんだ付けを!