こんにちは、はんだ付け職人です
今週は、前回お話した中で鉛フリーハンダを使用すると
「コテ先の消耗が早い。」という例があったんですが
銅食われについて少しお話しておきます。
鉛フリーハンダでは、共晶ハンダに比較するとコテ先の消耗が
3倍ものスピードで進みます。
これは、【銅食われ】と呼ばれる現象に代表されるように、鉛
フリーハンダには、鉄や銅さらにはステンレスまでもが溶け出
すことが原因です。
コテ先の構造は、熱伝導率の高い銅の棒に鉄が数100マイクロ
メートルの厚さでメッキされたものが一般的です。
鉛フリーハンダでは、鉄メッキ自体がハンダの中に溶け出すのは
もちろんですが、鉄メッキの鉄分子の間からも銅の分子がハンダ
の中へ徐々に溶け出します。
コテ先は使用時間に比例して痩せていき、穴が開いてしまったり
内部に空洞ができてしまったりします。
この現象によるコテ先の消耗は、特にコテ先温度を高温に上げた
ときに顕著で、数時間でコテ先が使用不能になることもめずらし
くありません。
鉛フリーハンダは融点が高いために、同じ母材を対象としたハン
ダ付けでも共晶ハンダに比較すると熱容量が不足してしまいます。
同じハンダコテ、同じコテ先を使って
共晶ハンダ → 鉛フリーハンダへ切り替えた場合、足りない熱
容量を補うにはどうしてもコテ先温度を上げることでしか対処で
きません。(プリヒーターなどの工夫はできます。)
また、コテ先温度が上がることで、コテ先への酸化物の付着が多
くなり、コテ先掃除の頻度も増えますが、濡れたスポンジで急激
に温度衝撃を与える回数が増えることもコテ先の消耗を早める要
因のひとつです。
さらに、鉛フリーハンダでは、コテ先だけではなく基板の銅パタ
ーンも長時間熱を加えると消失してしまいます。
特に、手直しなどで基板パターンの上でハンダを溶かしたままの
時間が長くならないように注意する必要があります。
私も何度か局所噴流DIP槽でコンデンサ交換に時間を掛けすぎ
て、パターンを消失させた経験があります。
もうひとつ、おまけに鉛フリーハンダではステンレスまでもが侵
食されます。ハンダ槽がステンレス製の場合、早ければ1年程度
で、ハンダ槽に穴が開く事故に繋がります。
また、その対策としてチタン製のハンダ槽が最近の主流ですが
掃除の際に、表面の酸化膜を傷つけてしまうとチタン槽であって
も、やはり侵食されてしまいますので注意が必要です。
では、今週はこのへんで・・。明るいハンダ付けを!