47716213.jpgこんにちは、はんだ付け職人です。
今週は、鉛フリーハンダと共晶ハンダとの違いについてのお話です。

鉛フリーハンダを使ってハンダ付けを行う際、融点の違いが大きく
影響してきます。実際、融点は共晶ハンダで約183℃、鉛フリーハ
ンダでは約217℃なので、その差は約34℃程度しかありません。

ところが実際に使ってみると、共晶ハンダに慣れた方には
「あれ?・・全然溶けないな?」という感じを受けられると思います。

事実、共晶ハンダでは何の問題もなくハンダ付けできていたのに
鉛フリーハンダに換えた途端、まったくハンダが溶けなくなること
も珍しくありません。

これは、融点の違いが熱容量にも大きく影響を与えているためで
母材の体積に比例して、より大きな熱容量を必要とするようになり
ます。

ですので、小さなモノ同士をハンダ付けする場合は、鉛フリーハ
ンダであってもさほど影響は感じません。

ところが、基板のグランドパターンに繋がったランドや、コネクタ
の金属端子などの大きな母材の場合には、今まで使ってきたハンダ
コテではまったくハンダを溶かすことすら出来ない場合が出てきま
す。

以前からこのメルマガで何度もお話しているように、コテ先温度は
鉛フリーハンダの場合、MAX360℃までに抑えたいですから、コテ
先の温度を34℃も上げるわけにはいきません。
(これをやってしまうと、さらに鉛フリーのハンダ付けを難しく
 複雑にしてしまいますね。)


二つ目に、鉛成分の有無が挙げられますが、これは当たりまえですね。
鉛フリーハンダには鉛成分は入っていません。
 
三つ目に、濡れ性、広がり性の差があります。改善されたとはいえ
鉛フリーハンダは共晶ハンダに比較すると粘度が高く、濡れ、広が
り性は劣ります。

この性質が鉛フリーハンダを使ったハンダ付けを難しくしているわけ
ですが、逆に【セルフアライメント効果】が高いわけですから、表面
実装部品のズレなどは自動的に修正される利点があります。

※セルフアライメント効果: 溶融中のハンダの表面に浮かぶ表面実
 装部品が、ハンダの表面張力により引っ張られて、基板パターンの
 正しい実装位置に定位されることを言う。

四つ目に、材料コストの差が挙げられます。これは先週もお話しまし
たね。共晶ハンダは、かなり安価に流通していましたが、鉛フリーハ
ンダの登場から錫や銀の価格は上昇しつづけており、もはや、ハンダ
の材料コストは無視できないところまで上昇してきました。

特に希少金属である銀は、地球上での埋蔵量が限られているため、今
後も価格が下がることは期待できません。将来的には銀を使わないハ
ンダが主流になるように思います。

五つ目に、ハンダ付けの仕上がり状態に若干の違いが見られます。共
晶ハンダでは適正なハンダ付けを行うと ピカッと光って金属光沢が
あります。

鉛フリーハンダでも、本当にいい条件を出してやるとピカッと光って
金属光沢が出るのですが、たいていの場合、完全な条件を出せません
ので、ツヤがなくザラッとした感じに仕上がります。
(熱容量が不足するんですね。)

長くなりました。
今週はこの辺りで・・。

では、明るいハンダ付けを!