1bbb257b.jpgこんにちは、はんだ付け職人です。

今日は、従来の温度飽和型ハンダコテの温度管理と
ISOのジレンマ・・についてのお話です。


☆ご質問

半田こて温度管理について教えてもらいたいです。

共晶半田のこて先は、320℃~360℃ 
鉛フリーは、360℃~400℃の温度設定がはんだのヌレ性を考慮した上で
部品などの熱的ダメージが与えない温度範囲と聞いていたため、これを
半田こての設定温度規格値として管理をしようとしていたところ、高千穂製の
コテペンを、はんだこて先温度計(HAKKO 191)で約5sあてて測定した結果、
共晶半田のこて先で約420℃、鉛フリーで460℃ありました。
(半田こて、こて先は3,4回使っただけですのでまだ新しい)

質問1:このこてを使用するにはどのようにすればよいのでしようか?
質問2:はんだこて先温度規格値の変更してもいいのか? 
(例えば、共晶を約420まで 鉛フリーを460℃まで)とか・・・
質問3:コテペンの使用を禁止し温度調節の出来るこてにする
(これは、弊社の半田こてがのほとんどがコテペンのためこれは無理と思う)
質問4:コテペンの温度を下げれる方法があれば教えてほしい。
(お金のかからない方法で・・・)
1,2年後にはISOを取得しようと考えている会社なので、今のうち出来ることは
行いたいためにいろいろと質問を書きました。よろしくお願いします。



☆はんだ付け職人回答

答えが前後しますが

まず、高千穂電気さんにはコテペンの温度を調整するコントローラーが
    別売りで販売されています。
パワーコントローラー PC-101

当社でも数年前までコテペンを標準で使用していました。
ところが、やはり,ISO絡みでコテサキ温度の規格が決められ
このコントローラーを使うようになりました。

コントローラーの目盛りが動くのでテープなどで固定してやる必要が
ありましたが温度調節は可能です。
(何度も温度測定して、飽和温度を決める必要があります)


次に、はんだこて先温度規格値の変更についてですが
私の認識としては 共晶でも鉛フリーでもコテサキ温度は360℃が上限
だと感じています。

鉛フリーハンダで400℃を超えるような温度でハンダコテを使用すると
ハンダ付けの難易度がものすごく高くなる上、コテ先の消耗が早くて
ランニングコストが高くなります。

高温のハンダコテ先でハンダ付けするには
秒殺でハンダ付けを完了させる必要があり、小さな連続するポイントを
タッタッタッタ・・と熟練者がハンダ付けすると確かに量産品における
工数は少なくなるのですが、別の問題が発生する確率が高くなるので
あまりお薦めできません。

これは、スローモーションで解説すると
420℃のコテ先を糸ハンダと母材に触れることで
一時的に温度を下げ、約250℃のハンダ付けに適した温度に瞬間的に
ハンダの温度が上がるのを見計らってコテ先を離している・・。
という離れ業を経験的にやっておられるわけです。
(これは貴重な技なんですが・・)


おそらく、コテペンの作業に慣れた方が、温度コントローラーを
付けてコテサキ温度を調整したコテペンで作業すると
熱容量が小さくなった分
「ハンダがなかなか溶けない・・」
「時間が掛かる・・」

などの苦情が出てくるかと思います。

これをコテサキ温度を360℃を上限として解決するには
ハンダコテの熱容量を大きくするのが一番早く、当社も結局
全てのハンダコテを入れ替えました。

ISOの取得が1,2年後であれば 温調付きのハンダコテを2台づつでも試験的に導入
してみる方法もありますね。

ISOというのは、誰でも同じように作業できるようにするのが
目的みたいなところがありますから、
一部の職人さんしかできないハンダ付けは認められない・・
のが現状だと思います。


ただし、単純にハンダコテの入れ替えを推奨しているわけではなく
コテ先の蓄熱量(要するに直接的な作業熱量)を
増やすことで、作業時の温度低下の低減と作業領域の拡大が
可能な作業もあります。

・パワーコントローラーで作業温度を下げて調整
・作業できるが作業性が悪い(熱復帰が遅い)場合はコテ先のサイズアップ
・作業温度を下げて全く作業できない場合は半田ごて自体のサイズアップ

この方が無駄なコストをかけたくない方には最善の提案になるかと思いますが
ハンダ付けの対象物によっては対応できない場合もありますね。