こんにちは、はんだ付け職人です。
今日は、ハンダゴテのコテ先を当てる時間を管理することについて
ご質問がありましたので考察してみましょう。
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☆質問
さて、御相談がございます。
客先から半田付け時間を管理する為に
ブザー音等で時間を一定にできないか、問い合わせが来ております。
その辺りの工夫について何かアドバイス
ございましたら御教示していただきたく存じます。
お手数ではございますが、宜しくお願い申し上げます。
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☆考察
おそらくお客様は、はんだ付けの品質を確保するために、ハンダコテのコテ先を当てる時間を
一定に管理することを要求されているのだと思います。
例えば、コテ先当てる時間をメトロノームやブザーなどを使って、一定時間に管理することは
可能だと思います。
しかし、コテ先を当てる時間を一定に保てば、はんだ付けの品質が確保されるか?と問われれば
「それは、出来ません。」という回答になります。
というのも、例えば350℃のハンダコテを3秒当てたから
このハンダ付けは良品であるとは保証できないからです。
コテ先の当て方や角度、接触面積やコテサキ掃除の具合によっても
母材の温度の上がり方は大きく異なります。
同じ基板上の見た目によく似ているポイントでも回路パターンの走り方や
スルーホールの接続先、積層基板の内層の回路の大きさによって、
熱容量も大きく異なりますので、一律にコテ先を当てる時間を
決めることは出来ません。
(自動化してロボットで、はんだ付け箇所1点づつ細かく条件出しを行えば、
理想に近いはんだ付け条件を確保することが出来ると思いますが
それでも、コテ先の摩耗具合や、酸化物の付着などによって、条件が変化してしまうと
考えられます。)
ハンダゴテを使った手はんだ付けの場合は、目安になる時間を決めて、
ハンダの広がり具合を見ながらフィレットを形成していくほうが現実的ではないかと
思います。
☆ハンダ付け作業の標準化
ハンダ付け作業の標準化というと
【コテサキ温度】【コテ先を当てる時間】をがんじがらめに
管理しようとする方がときどきおられます。
正しいハンダ付けの知識を備えた方が、熱容量や、熱伝導、熱の逃げのことを
考慮したうえで定める場合はいいのですが、
知識が不十分なまま標準化してしまうと、予期していないところで不良が発生して
それを抑えるために、ますます標準化の条件を厳格化して・・
という悪循環に陥ってしまいます。
こういった場合、現場サイドでは【守れない作業標準】を守るために
さまざまな工夫を凝らしてしまいます。
そして、こうした工夫は管理者には見つからないように行われるため
ますます、不良の原因特定が難しくなる・・ことがあります。
品質管理を行う人にも、はんだ付けの正しい知識は必要ですね。