こんちは、はんだ付け職人です。
今日は、ラジコンやドローンなどの充電で、大きな電流を流すため使用される

XT90コネクタとケーブルをはんだ付けした際の動画と考察です。

XT90 コネクタ

実は一度はんだ付けの依頼があって引き受けたものの、
ケーブルがAWG10~14程度とかなり太く、 カップ端子も太い割樹脂が熱弱くて、
普通はんだ付けすると樹脂が融けてピンが曲がってしまったことがありました。

こうした時、どういう考え方でハンダゴテやコテ先、コテ先温度を選択していくのか?
試していくのか? といったことが、他のはんだ付けでも役立つのではないかと
思いまして 記事しました。

動画はこちらです。



①まず、樹脂が熱弱くてコネクタピンが曲がるのを防ぐため
 相手側のコネクタを嵌合させて、カップ端子へ加わる熱を逃がす必要があります。
(Dサブコネクタなどでも同じです)

 同時、仮樹脂部が融けても、ピンが曲がるのを防ぐことが出来ます。




②ケーブルの太さが、カップ端子の太さいっぱいギリギリなため、
 予備はんだは、ケーブルだけ行いますが、芯線の太さを太くしないよう
 する必要があります。


※予備はんだをしないと、コネクタのカップ端子ごと加熱することなるので、
 はんだが馴染むの時間が掛かり、確実コネクタ樹脂を融かします。




③カップ端子側予備はんだを行うと、ケーブルとカップのはんだ双方の
 はんだを融かして
芯線を挿入する際、芯線がバラケてカップ入らなくなります。


【ご参考】D-subコネクタ等でもカップ端子へ予備はんだを行わず、
 リード線のみ予備はんだを行うことが多いです。
 その理由は、カップ端子に予備はんだを行うとはんだに含まれている
 フラックスが不活性化してしまう為です。
 このフラックスが不活性化した状態でカップ端子のはんだを融かしながら
 予備はんだされたリード線を挿入すると、 高確率でフラックス不足になり
 オーバーヒート(ツノやはんだが酸化して脆くなる)します。

 カップ端子とリード線両方に予備はんだをして作業することも可能ですが、
 フラックス活性化時間が非常に短く コテ先を離すタイミングをつかみにくいので、
 コテ先を離すタイミングが遅ければオーバーヒートしますし、
 早ければ熱不足による馴染み不足が発生しやすいです。

 ただし、フラックスを塗布して作業すれば作業性は劇的に改善します。
 しかし塗布したフラックスは、熱をかけると気化して超流動状態になるので
 コネクタ勘合部に付着して導通不良を起こす可能性が出てきます。
 そのため、コネクタにはフラックスは出来るだけ使わない、もしくは
 はんだ付け後に確実に除去する事をお勧めします。


④樹脂が非常弱いので、なるべく低温ではんだ付けするため、
 融点183℃の共晶はんだ
使用します。(信頼性も高いので)

 ※量産でROHS対応が必要な場合は、鉛フリーはんだを使用します。



⑤加熱時間を短くするため、一気熱を流し込める熱容量の大きな
 ハンダ
ゴテを使います。

 今回は150Wでコテ先蓄熱出来る形状のハンダゴテ、GOOTのRX-822ASを使用。

 ※そこそこ高価なハンダゴテですが、研究開発やガッツリ競技ラジコンに
 打ち込まれているなら良いはんだごてです。
 プロ用 はんだ付け職人ハンダゴテセット(試作、開発者向け)



⑥ケーブルが太いのでケーブルの予備はんだは、6Cのコテ先を使用。
 コネクタはんだ付けする際は、端子の露出部が小さいので、
 的確接触できるよう
3Cを使用します。
 コテ先温度は、低めの315℃設定します。




⑦ケーブルの被覆を剥いて、仮コネクタのカップ端子挿入してみると、
 奥行きが結構深く、10mm程度入ることがわかりました。
 被覆は余裕をみて、12~13mm剥きます。

 ※ギリギリだと、コテ先を当てるスペースが足りず、被覆溶融はんだが
 接触してしまう。




⑧糸はんだはφ0.8mmを使用(1.0でも良いと思います)



⑨コテ先を当てるポイントは、カップ端子ではなく、芯線の予備はんだ部分当てます。
 コテ先は熱を伝えるためのはんだを融かして付着させておきます

※効率よく加熱して加熱時間を短くするためです。

 



以上の9つのポイントを予想して、ハンダゴテやコテ先の形状、コテ先温度などを
選定し、はんだ付けを行いました。

仕上がりは動画でも観ていただけますが、芯線の形状が観察できるはんだ量で
カップ端子のフチはフィレットが形成されています。
樹脂の融けもほとんどなく、コネクタの抜き差しもOKでした。

いかがでしょう?
はんだ付け職人は、XT90コネクタをはんだ付けするの、こうした考えと推論のもと
道具選びやコテの当て方を決定しています。


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参考なりましたら幸いです。
では、明るいはんだ付けを!


※2021年2月24日の記事をリニューアルしました