スズメッキ線は、軟銅にスズメッキを施したもので、ジャンパー配線に使用したり、
ユニバーサル基板に回路を作成するときによく使われます。
他にも、リード線タイプの抵抗や、セラミックコンデンサ、電解コンデンサや
トランジスタにも端子として使用されています。

これは、スズメッキ線が軟らかくて曲げ、切断加工がしやすく、
はんだの濡れ性も良いため、はんだ付けとの相性がとても良いから・・というのは
皆さんの認識通りです。
ところが、スズメッキ線の中には、見た目はキレイなのに、
えらくはんだの濡れが悪くて、予備ハンダさえ弾いてしまうものに
出くわすことが良くあります。


一見キレイなスズメッキ線
一見キレイなスズメッキ線

この原因は、スズメッキ線が製造されてからどの程度の期間が経過しているかに
大きく影響されます。 スズは比較的、酸化し難いので表面からの劣化は少ないです。
ところが、内面の銅が表面のスズメッキ層に拡散してCu6Sn5という
金属間化合物が作られます。
※はんだ付けの接合原理にも出てきましたが、スズと銅は常温でも
原子が拡散して、金属間化合物を形成します。
(はんだ付けは熱を加えてこの化学反応を早めているわけです)
この金属間化合物は、スズよりも融点が高く、スズメッキ線の表面に
この化合物が増えてくると、はんだの濡れ性が悪くなるわけです。
古いスズメッキ線に予備ハンダを施すと写真のように
マダラ状にはんだを弾くことがわかります。


上記のスズメッキ線に予備ハンダしたところ。表面がマダラ状にハンダを弾いている。
上記のスズメッキ線に予備ハンダしたところ。表面がマダラ状にハンダを弾いている。

したがって、スズメッキ線はもちろんですが、リード線タイプの抵抗や、
セラミックコンデンサ、電解コンデンサやトランジスタなどの電子部品も
1年以上保管すると、リードのはんだ濡れ性が悪くなるため、
写真のように、リードがはんだを弾いて、スルーホールにはんだが上がらなくなる
原因となります。 (熱量不足だけが原因ではないんですね)

リードがはんだに濡れずスルーホールのはんだ上りが悪くなった

このように、はんだを弾くようになった部品は、はんだ付け実装前に、
リードに予備ハンダを施すなどの対策が必要となります。
何度も予備ハンダを繰り返すと濡れ性は復活します。