こんにちは、はんだ付け職人です。
今日は、オーバーヒートについてのお話です。
というのも、はんだ付けの講習会でお話していて、
オーバーヒートについての認識を持っておられる方が
とても少ないことに気づいたからです。
「えっ!これ、オーバーヒートなんですか?」
という方がとても多いんですね。
先日の高度ポリテクセンターでの検定で、実際にはんだ付けされた
教材(ラグ端子)の写真を4つ並べました。
良いものから順に、オーバーヒートに到るものまでを並べました。
違いがわかるでしょうか?
①
②
③
④
ラグ端子のはんだ付けは、おそらく皆さん「簡単だ!」と
お考えだと思いますが、半数くらいの方にオーバーヒートの
兆候が現れています。
ラグ端子は、フラックスの洗浄を行なわないので
フラックスの状態を観察すると、熱の掛け具合が良くわかります。
フラックスの重要な役割のひとつに、
「溶けたはんだと母材の表面を覆って、酸化を防ぐ」があります。
はんだ付けは、フラックスが活性化している短い間に、
はんだと母材の温度を約250℃まで上げて、
約3秒間の条件を作り出す必要があります。
この意識がない方は、フラックスの活性化している時間を
超えて加熱してしまったり、
(※熱を効率よく伝えられない)
母材と溶けたはんだの温度が250℃を超えるほどに
加熱してしまうため、
(※糸はんだの供給が遅くて、溶けたはんだの温度が上がってしまう)
オーバーヒートを起こしてしまいます。
では、写真を見てみましょう。
①の写真は、はんだの表面がフラックスの薄い膜で覆われている
良いはんだ付けの写真です。
②の写真は、部分的にフラックスの膜が破れ始めていますが、
まだ、酸化にまでは到っていない状態です。
③の写真は、フラックスの膜が破れて少し時間が経過したため、
フラックスが茶色く変色し、はんだ表面が酸化し始め、
凸凹、ザラザラが現れ始めています。
この部分は、既に脆くなっているはずです。
④の写真は、さらに加熱したため、フラックスは焼け焦げており、
被覆が焼け、はんだ表面が白く酸化して、表面がザラザラに
変質しています。
はんだの内部では、合金層が成長しすぎて、スズと銅原子が
拡散し、原子の空孔ができて脆くなっているはずです。
③④のはんだ付けの出来栄えであれば、
「フラックスがちょっと焦げたなあ~」程度の認識しか
無い方も多いのではないでしょうか。
肉眼では、わからないですが、顕微鏡などで拡大すると、
コネクタのはんだ付けや基板実装でも、同様のことが
多数起こっていることがわかります。
実体顕微鏡などで、はんだ付け部を6~10倍に拡大して
観察することは、確実にスキルをUPしてくれます。
ぜひ、お試しください。
では、明るいはんだ付けを!