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昔ながらの技術継承へ 検定試験が人気
2015年1月24日
国内のものづくりを支えてきた「はんだ付け」や「ばね」の製造など、昔ながらの技術の知識や技能レベルを問う検定試験が人気を集めている。機械化が進んでも新たな製品開発には手仕事が欠かせないが、団塊世代の大量退職によって次世代の職人養成は急務だ。中小企業を中心に高度な製造技術を持つ大阪府内でも、業界団体が講習や検定を実施して技術の継承に励んでいる。
実技講習ではんだ付けの手法を学ぶ参加者=摂津市のポリテクセンター関西(NPO法人日本はんだ付け協会提供)
はんだ付け検定合格者に贈られる認定バッジ(NPO法人日本はんだ付け協会提供)
約150社で組織するNPO法人「日本はんだ付け協会」(滋賀県東近江市)は、2011年に「はんだ付け検定」を開始。2月12、13の両日には大阪のポリテクセンター関西(摂津市)でも実施する。大阪府内では過去2回実施し、いずれも定員を超える盛況ぶりだった。
■指導者も受検
はんだ付けは熱エネルギーを利用してはんだと母材との間に合金の層を作って接合し、鉛を含まない接合には特に高い技術力が求められる。
「独学や見よう見まねで技術を覚える職人が多く、正しい知識が広まっていない」と話すのは同協会理事長の野瀬昌治さん(48)だ。このため、検定試験では「現場の指導者が受検するケースも多い」と説明。同協会はDVDを作製して正しい知識の普及に努め、検定前には実技講習も開いている。
野瀬さんは「はんだ付けは製品開発に欠かせない技術。地味なイメージを払拭(ふっしょく)したい」と語り、若者向けにデザインしたバッジを検定合格者に贈るなどして技術者育成に力を注いでいる。
■受検者数堅調
金属ばね製造技能士の国家資格が得られる技能検定も堅調に受検者数を伸ばしている。日本ばね工業会(東京都)によると、近年は500人前後で推移し、13年度は554人が受検。このうち大阪府内の受検者は128人を占めた。
堅調な推移の背景について、同会技術部長の井上信彦さん(61)は「海外に生産拠点を増やす流れの中で全体のスキルを底上げする必要が出てきた。社内での技術伝達のために検定を利用しているのでは」と分析する。
技能検定をめぐって全国4会場で開く講習会は、ばねを手で加工する昔ながらの技術を学び、製造手法を習得する。「今は機械での製造がほとんどだが、技能を伝達するには知識も必要」と井上さん。その知識を学ぶモチベーション向上の機会として技能検定を捉えている。