こんにちは、はんだ付け職人です。
先週ご紹介した電子部品の保管についてのお話が
※電子部品を紙製の袋や、ナイロン製袋の中に紙と一緒に
保管すると発生する不具合についてのお話
結構反響が大きかったので、
今週も部品の保管に関するお話を紹介させていただきます。
スルーホールのハンダ上がりについてのご相談を
よくお受けします。
「はんだがスルーホールにどうしても上がらないんですが・・」
というご相談です。
こうした不具合の場合、どうしても
フロー槽のプリヒーターが・・
はんだ層の温度条件が・・
コテ先温度が・・
フラックスが・・
といった、はんだ付け条件の方に目が向きがちで
「いろいろ試してみたんですが、どうしても・・」
と迷宮入りしてしまうことも多いです。
「基板や部品の保管はどうされていますか?」
とお尋ねすると、
「ポリエチレンの袋に入れて、乾燥剤を一緒に入れてます」
「防湿保管庫に入れてますから完全です」
といった、「部品には絶対問題がない」という認識を
されている方が多いです。
ところが、部品端子や基板パターンの酸化以外にも
悪さをするものがあります。
例によって、田中和吉 大先生の著書
はんだ付け作業のトラブル対策【日刊工業新聞社】 (1984/01)
に解説がありました。
(この本、いい本なんですが絶版となっており
Amazonの古本が¥7,500にもなっています。)
スズメッキは、表面からの酸化だけではなく、
内面の銅が、表面のスズ層にも拡散して
スズと銅の合金を作ります。(Cu6Sn5)
この拡散現象は、相互拡散と言って常温でも進行します。
この合金は融点が高いため、これが増加してくるに従って
はんだの濡れが悪くなる・・とあります。
通常、スズメッキ線では6ヶ月以上経過すると、はんだの濡れが
悪くなるので、それ以上のストックはしないように・・
と紹介されています。
プリント基板のスルーホールも、基本的に銅パターンに
メッキされています。
最近はRHOS対応のために、スズメッキされた
部品や基板が多くなっていますので注意が必要です。
※鉛入り共晶はんだによるメッキのほうが
経時変化には強かったそうです。
ある程度、部品や基板を長期保存することはやむを得ないですが、
コスト面だけ考えて、部品や基板を多めに購入するのは、
避けたほうが良さそうです。
「どうしてもハンダが上がらなかった」
スルーホールのはんだ付けが、
ある日気づいたら、「すっかり解決していた」ような場合には、
陰にこうした秘密が隠されていたのかもしれません。
では、明るいはんだ付けを!