接続端子の楕円形を穴は埋める? 埋めない?
こんにちは、はんだ付け職人です。
今週は,,押しボタンスイッチやロータリースイッチなどに
使用されている接続端子へのハンダ付けについてのお話です。
メールで何件か問い合わせをいただいており、講習でも
たずねられたことがあるのですが
「穴はハンダで埋めたほうがいいの?」
「穴を埋めてなかったら、ハンダ不足と客先に言われたのですが・・」
というご質問です。
接続端子には、楕円形の穴が開いており、ここへリード線をV字に
折り曲げて引っかけからげをするものとします。
さて、あなたなら楕円形の穴をハンダですべて埋めますか?
埋めないでしょうか?
ハンダの適量は、リード線の線筋がわかるように・・でしたね。
穴を埋めようとすると、ハンダがポッテリと乗ることになります。
でも、お客さんは「穴あきはNGだ!」と言ってます。
さあ、どうしましょう?
答えは「また来週!」
・・にすると怒られますので、解説を・・
今回も、田中和吉先生の威をお借りします。
既に昭和59年に明快な解説がされています。
『事例にみる はんだ付け作業のトラブル対策』
日刊工業新聞社 著:田中和吉 p185
によりますと、戦前はすべて塞ぐように指示されていたそうです。
(戦前ですよ・・)
——–以下引用————–
現在は、むしろ穴を塞ぐことで起こる弊害のほうが大きいので
塞がないのが主流である。
その理由は、これらの端子はいずれも材料のもつ、バネ特性を利用して
接触機能を生かす部品として作られており、その接触機能を
低下させないためである。
バネ特性は、熱を加えて焼鈍(焼きなまし)されることにより、
その特性が失われる。
はんだ付けするときに、孔の全面をはんだで塞ぐことによって、
熱伝導面積が多くなり、その結果バネ性が失われ、接触片同士の
接触圧が低下して、電気的接触抵抗が増すことになる。
そのために、真空管のソケットや・・つづく
————–ここまで—————
要は、あの穴は「熱を部品の内部へ伝えないように考えて
細長くしてある」わけです。
したがって、ハンダで埋めてしまうことは、部品の設計者の
意図を無視したことになり、本来の使い方ではないわけです。
「穴あきはNGだ!」とおっしゃるお客様には、このように
説明していただくと納得いただけるのではないでしょうか。
では、明るいハンダ付けを!