こんにちは、はんだ付け職人です。
先週の鉛フリーハンダを使ったハンダ付けが「なぜ難しく感じるのか?」
の話の続きです。
原因が共晶ハンダとの融点の差に起因する熱容量の差である・・という
ところまでは大丈夫ですね?
鉛フリーハンダと共晶ハンダとの融点の差は約34℃なんですが
一番多い誤解は、ハンダコテや糸ハンダの条件をそのままに、
「コテ先温度を34℃上げればいいだろう。」という考えです。
鉛フリーハンダの導入で困っておられる会社での間違いでNo1です。
前々から口を酸っぱくして言っていますが、コテ先温度は360℃以上に
上げないほうがいいです。
安易にコテ先の温度を上げると、コテ先の酸化が早くなり、ほんの数秒で
コテ先を酸化膜が覆ってしまいます。
酸化膜が覆ったコテ先では、まず熱が伝わりませんので「コテ先の温度を
上げたのに、全然ハンダが溶けないな。」と感じることになります。
で・・さらにコテ先温度を上げる。→ますます溶けない。
というスパイラルに陥ります。
さらに、この頃にはコテ先は酸化して使えなくなっています。360℃
以上のコテ先温度では、ほんの数分でコテ先が使えなくなってしまう事も
珍しくありません。
「さっき新品に換えたとこです。」と言われても、コテ先を見てみると既に
手遅れのことが多いです。
また、コテ先温度が高いと、フラックスの蒸発も早くなります。
瞬時にフラックスが蒸発する上に、ハンダが溶けない・・。
こうして、ますますイモハンダが発生しやすくなり、鉛フリーのハンダ付け
が難しくなってしまうわけです。
では、鉛フリーのハンダ付けを快適に行うには、どこを改善すればよいの
でしょうか?
不足する熱容量をどこかで補ってやればよいわけですが、前述したように
コテ先の温度を上げる方法は、ハンダ付けの難易度を上げてしまうので使
いたくありません。
実は、融点の差は34℃もありますが、錫と銅の金属間化合物が形成される
適正な温度は共晶ハンダも鉛フリーハンダも変わりません。
約250℃程度が適正ですから、あまりコテ先温度を上げるのはこの点から
考えても好ましくありません。
まずは、糸ハンダの熱容量を小さくするために、糸ハンダの線径を細くして
やると大きな効果があります。
この改善だけでも「あれっ?」と思うほど簡単にハンダが溶けることがわか
ります。また、鉛フリーハンダは粘りが強く濡れ広がり性がよくないため
ハンダがドーム状にハンダ量が多くなりがちですが、糸ハンダを細くする
ことでハンダ量を調整することが容易になります。
「ハンダの供給が遅くなるので、作業性が落ちる。」という声も聞こえそう
ですが、ハンダが早く溶けるので逆にこっちのほうが作業が早くなったりし
ます。
次に、ハンダコテについてですが、長くなってしまいましたので来週に続きを
お話しましょう。
では、明るいハンダ付けを!