b2313521.jpgこんにちは、はんだ付け職人です

今週は、RoHS指令への対応だけでなく、ハンダ付けの信頼性の面からも
共晶ハンダと鉛フリーハンダを分けておく必要性について考えてみましょう。

実はこの話、何度か掲示板(給湯室)やブログ(はんだ付け職人のブログ)
や去年のメルマガにも書いたことがあるんですが、寄せていただく質問の中
でも多いものです。

現在、鉛フリーハンダについての話が続いていますので重複している箇所も
あるかと思いますがまとめておきます。

要は鉛フリーハンダに従来の鉛入り共晶ハンダが少量、微量混ざった場合の
信頼性についてです。

事例としては
1:誤って、共晶ハンダで使ったハンダコテで鉛フリーハンダ付けした場合

2:共晶ハンダでメッキされた部品を、鉛フリーハンダ付けした場合

3:共晶ハンダ付けされていた基板を手直しした際、旧い半田を
  吸い取って鉛フリーハンダ付けした場合

など、いずれもいかにもありそうなパターンですね。

まず、鉛で汚染された場合はRoHSからは除外されますのでその点は
お間違えなきよう・・。「信頼性は大丈夫じゃん!」といっても鉛汚染
された場合はRoHS除外品です。


さて、結論としては信頼性が著しく落ちる条件は限られています。
キーワードは【鉛の偏析】と【リフトオフ】【フィレット剥離】が挙げ
られます。

ひとつめは、表面実装でハンダ付けした基板に、リード部品などを実装して
フローハンダ(ハンダ槽など)した場合です。

こういうケースでは、表面実装ハンダの時点では 完全にハンダの合金層が
形成されていても「ハンダの剥離」という現象が起こります。

この剥離の発生の条件については

1:リードメッキが 鉛入り共晶ハンダ(Sn-Pb)である。
2:フローハンダ付け時の表面実装部品リードの接合部温度が175℃以上ある。
3:比較的 大型の 表面実装部品である。

の3つが すべて揃う必要があります。 
メカニズムについては 難しいので簡単に書くと

1:表面実装のリフローハンダ付けの時点で メッキに含まれる鉛が 溶け出して
  部品のリードの接合部表面に集まってくる。( 偏析といいます・・)

2: この鉛は 鉛フリーハンダ(Sn―Ag-Cu)との合金を形成します。
 ( Sn―Ag-Pb 3元合金 融点178℃ )

3:フローハンダで温度が175℃を超えると、この合金層だけが部分的に溶けます。

4:熱膨張などによる基板の反りなどで応力が発生し、偏析で溶けた部分が剥離する。

というものです。 
したがって、鉛入り共晶ハンダ(Sn-Pb)に使用したコテ先は、微量とはいえ
鉛(Pb)を付着させており、そのまま鉛フリーハンダへ使用すると、鉛がハンダ
中に溶けだして悪さをする可能性が出てきます。

鉛(Pb)がハンダに含まれなければ、この現象が起こらないわけですから
「鉛入り共晶ハンダ(Sn-Pb)に使用したコテ先を、鉛フリーハンダに使って
はいけない」ことになります。


ふたつめに、やはり、部品リードに鉛入り共晶ハンダ(Sn-Pb)をメッキした
部品をスルーホール基板でフロー半田(ハンダ槽)した場合に起こる「リフトオフ」
と呼ばれるフィレット剥離があります。

この現象は、上記のSn―Ag-Pb(3元合金 融点178℃)が、部品面側の
基板との接合部に形成されるのは同じで、この部分だけが融点が低くなり、最後ま
で液層になっているため、やはり、基板の熱膨張による応力によって剥離します。

ただし、スルーホール基板でしか発生しないため、片面基板では起こりません。

このように見ていくと、信頼性の面から考えても、コテ先を完全に区分して分けた
ほうが良いことがわかります。

ただし、本当の意味では、これら2つの条件に当てはまらない事例の場合は、
万一、コテ先を混ぜて使ってしまっても品質上の問題は起こらないということに
なります。(厳密には、鉛汚染されると結晶粒界が徐々に劣化しますので年月を
経るとフィレット亀裂などが起こる可能性があります。)
 
しかし、製造の最前線ではRoHSへの対応と、混乱を防ぐ意味もあって「共晶
ハンダと鉛フリーハンダを完全に区分すること」ということで管理したほうが良
いですね。

では、明るいハンダ付けを!