こんにちは、はんだ付け職人です。

本メルマガは、2007年10月からスタートして、
はや、5年以上前の月日が経ちました。

当初は、気がついたことを思いつくままに
拙い文章で書いておりましたが、中には結構重要な
話もあります。

ところが、こうした情報が読者の方が簡単に探し出すことが
出来ない状態にあります。

また、最近読者になられた方には、そもそも
どういった情報があるのかもお知らせできていませんでした。

そこで、過去のメルマガから有益な情報を掘り起こし、
現在の新しい情報を合わせて、再編集し、

「日本はんだ付け協会」のWEBサイトに
まとめていく作業を始めました。


会員様でないメルマガ読者の方にも
今日は、例としてその題1話目(VOL1)を紹介します。
(質問の頻度が高いのでお役に立つかもしれません)

☆スルーホールのはんだ上がりが悪いのは何故か?
 

【スルーホールへのハンダの上がりが悪い】場合の
対処方法について考えてみましょう。

従来から、共晶ハンダでも発生していた問題ですが、
鉛フリーハンダを使用するようになって、より一層
起こりやすくなっている問題です。

というのも、鉛フリーはんだは、共晶はんだよりも粘度が高く、
融点が高いことから、共晶はんだよりも大きな熱量を必要とします。

共晶はんだ用に設計された基板をそのまま使えば、
はんだは著しく上がりにくくなります。

しかも、一度失敗するとハンダを吸い取って何度やり直しても
ハンダは上がりません。

通常、スルーホール基板では部品面側の面一(ツライチ)まで
ハンダが上がっていることが良品の条件とされていますから
やっかいです。


これらの発生メカニズムを考えてみますと
スルーホール基板はたいていの場合、積層基板(基板回路が
積み重ねてある)になっており、基板表面に見えているランドの
割に、その熱容量は大きいものです。

さらには、スルーホールの内壁は部品のリードが接触していて
熱が逃げやすい状態です。


図:スルーホールの構造イラスト 
thruhole

 

 

 

 

 

 

 

 



ランドが小さいとハンダコテ先から熱を伝える接触面積も小さくなり
熱効率が悪く、なかなかスルーホール内部まで温めることは難しくなります。

ハンダをスルーホールに流し込むには、まずフラックスをスルーホール内に
流し込む必要があります。

このためには、スルーホールの内壁が130℃以上に
なっている必要があるのですが、これが出来ていないうちに
ハンダを供給してしまうと、

「ハンダが上がらない・・」となってしまいます。

また、フラックスを流し込んだ後、ハンダを流し込むにはスルーホール内壁と
部品のリードを220℃以上の温度まで温めてやる必要があり、
(鉛フリーでは250℃以上)

これが速やかに行われないと、今度はフラックスがスルーホール内壁に
焦げ付いてハンダが流れ込むのを阻止してしまいます。

ですので、一度ハンダを流し込むのに失敗すると何度やっても
ハンダが上がらないのがうなずけます。


これらのメカニズムから対策を考えてみると
スルーホール内にあらかじめフラックスを塗布しておくことや
プリヒーターなどを使って基板を余熱しておいて、スルーホール内壁の
温度を上げておくなどの手法が思いつきます。

また、粘度の高い鉛フリーはんだの場合は、
スルーホールの直径を大きくして、はんだが流れやすくしたほうが
有利です。

さらには、スルーホール内壁の温度を速やかに上げるためには、
表面に露出している、ランドの面積を大きくしたほうが、
ハンダゴテを当てて加熱するにも、フローはんだする場合にも
有利であることが想像できます。


こうした、発生メカニズムを知っておくと
打ち手もいくつか見つかるのではないでしょうか。


では、明るいはんだ付けを!