こんにちは、はんだ付け職人です。
今日は、ハンダゴテの電力表示についてのお話です。

最近では、あまり使われなくなってきましたが

「20W(ワット)くらいのハンダゴテで作業してください」
「15W以下のハンダゴテを使ってください」
「40Wのハイパワー!」

などと、ハンダゴテを表現することがよくありました。

現在でも、ホームセンターや電子工作キットなどを
取り扱うショップなどでは、主流なのかもしれません。

「40W以下のハンダゴテを使ってください?」

※鉄道模型の本や電子工作、真空管アンプ制作の本にも
 今だに「40W以下のハンダゴテを使ってください」といった
 表記がされているようです。


でも、これって「どういう意味?」
「温度設定なら何℃にすればいい?」
「現在の実態に合っていないのでは?」
と疑問に思われた方も多いと思います。

そう思っていたところに、いい本が復刻されました。
「ソルダリングアート」第5版 発行(白光株式会社)です。



当社で販売している「ハンダゴテセット」にも
発売当初は、白光さんのご好意で付録として付属していたのですが、
その後、絶版となったものでした。

先日、「第5版として復活しました」とご連絡をいただき
再び、付録として付ける事ができるようになりました。

HAKKO はんだ付け職人のハンダゴテセット


さて、この本の中に解説がありました。
一部引用させてもらって紹介させていただきます。

この従来の「40W」とか「60W」という表記は、消費電力を
表しておりまして、1958年に【JIS-C-9211】で
制定されました。

当時はハンダゴテを消費電力(ワット数)により10種類に
分類されていたようですが、2002年に廃止されています。

これは、ハンダゴテの進化により、単純にワット数では
規定できなくなったせいなのですが、

第一世代のニクロムヒーターを使ったハンダゴテでは、
ニクロム線の抵抗値 → 消費電力(ワット数) → 発熱量が
そのまま比例していました。

ですのでワット数による表示は的を得ていたわけです。

ところが、第二世代のセラミックヒーターの出現によって、
ややこしくなってきました。

セラミックヒーターの場合、温度によって抵抗値が常に変化します。
当然、消費電力(ワット数)も変化するわけです。

このため、従来の慣習に合わせるため、
コテ先温度が飽和温度に達して安定した時の抵抗値から、
消費電力に換算して表記を行っていたわけです。

でも、第三世代の温度調整型ハンダゴテになると、
この方法も難しくなりました。

(※弊社のハンダゴテセットは、HAKKOさんもGOOTさんも第3世代に当たります)

※HAKKO製

※GOOT製

なぜなら、立ち上がりの数秒間は120W相当の消費電力。
作業中は、失われた熱量に応じて発熱量(消費電力)を
変化させています。

これでは、消費電力(ワット数)で規定することはできません。
そこで便宜上、安定時の平均的な消費電力を
表記するようになりました。

さらに、コンポジットヒーターを使用した、
第四世代のハンダゴテでは、ヒーターの抵抗値は変わりませんが
コテ先温度に応じて0~最大電力の状態が存在します。

第四世代のハンダゴテは、最大消費電力を表示しているそうです。

・・となると、単純に消費電力(ワット数)の表記を見ても
何世代目のハンダゴテなのかによって、
まったく意味が違うことになります。

「こっちのほうが、W数が大きいや」と選んでも、
世代によっては、出力が逆転することもあるわけです。

これは、各メーカーによってもバラつきがありますから
正直、このワット数表示は当てになりません。

結論を言うと、はんだ付け対象物に約350℃に設定したコテ先を
当てて、はんだを融かすことが出来なければ、
そのハンダゴテは、パワー不足だと判断できます。

(コテ先は酸化していないキレイな状態で)

通常は、コテ先の体積と同じ程度の体積を持つはんだ付け対象物であれば
普通に融かすことが出来るはずです。

※例えば、金属ブロックや30cm四方の銅板などは、体積が大きく
 熱が逃げやすいので、150W以上の第3世代以降のハンダゴテを
 選択する・・ といった考え方です。


では、明るいはんだ付けを!