こんにちは、はんだ付け職人です
今週は、先週に続いて鉛フリーハンダと共晶ハンダとの違いに
ついてのお話です。
鉛フリーハンダの長所と短所についてまとめておきましょう。
まずは長所から・・。
1:鉛を含まないため環境にやさしい
これは当たり前すぎますね。
2:機械的強度が(共晶ハンダと比べると)強い
糸ハンダを曲げてもらうと一目瞭然ですが、鉛フリーハンダは
硬いです。鉛が含まれていないため、素材自体が硬いわけです。
かといって、溶接の代わりになるほどではありません。ハンダ
付け箇所に応力が加わるような接合はしないほうがいいですね。
3:電気抵抗が小さい。(共晶ハンダと比べると)
これも素材の性質です。オーディオマニアの方なんかは環境の
問題で鉛フリーハンダが取り上げられる前から、オーディオ専
門のハンダなんかを使用されていたこともあるかもしれません。
ただし、母材同士をきちんと密着して固定した上で、きちんと
ハンダ付けをした場合は、さほど差は出ないはずですね。どち
らも3~9ミクロンのSnーCu合金層が形成されるのは同じ
ですので。
4:比重が軽い。(共晶ハンダと比べると)
これも鉛が重かったせいですね。鉛フリーハンダを使用すると
わずかではありますが軽量化することができます。
5:セルフアライメント効果が高い。
粘度が高いせいもあって、特に表面実装では印刷したクリーム
ハンダやチップ部品が勝手に定められたパターン上の定位置に
戻ろうとする力が強くなります。リフローの条件さえ整ってい
れば、案外適当にマウントしても綺麗にハンダ付けできてしま
います。
次に短所について挙げますと・・。
1:融点が高いため、部品への熱的損傷を与える可能性が高い。
実際に私も困りましたが、LEDやスイッチなどの熱に弱い部
品のハンダ付けでは、LED素子が剥がれてしまったり、スイ
ッチが固着してしまったりします。
窒素フローはんだこてでの解決例は以前ご紹介しましたね。他
には、プリヒーターで予熱して出来るだけ低温でハンダ付けす
るなどの工夫が必要です。
2:濡れ、広がりが悪い。(共晶ハンダと比べると)
ハンダ付けを急ぐと、イモハンダになりやすくなります。ゆっく
りとハンダが広がっていく様子を観察しながらハンダ付けするよ
うな感じで作業を行います。
3:材料コストが高い。(共晶ハンダと比べると)
今は、素材全体の価格が上昇していますので、共晶ハンダも高く
なっていますが、銀の入っているハンダは特に高いですね。
1kg当たり¥5000円近くにもなっています。
(2年前 2400円程度でした。)
フローハンダで出る多量のハンダカスなども頭の痛いところです。
4:コテ先の消耗が早い。ランニングコストが高い。
コテ先温度を360℃以下に抑えていても、やはり酸化のスピー
ドが早く、鉛フリーハンダの銅食われと相まって、かなり消耗は
早いですね。
360℃を超えるコテ先温度で使用すると半日ももたないことも
めずらしくありません。(よくやりがちなので気をつけてくださ
い。)
いずれも、鉛の持つ性質を失ったことによる変化が大きいですね。
共晶ハンダとの違いと鉛フリーハンダの長所と短所について正し
く理解しておくことで、鉛フリーハンダを実際に使用する際、無
用の混乱を防ぐことができます。
では、今週はこのへんで・・。明るいハンダ付けを!