こんにちは、はんだ付け職人です
今週はハンダコテのコテ先温度についてのお話です。
このメルマガでも何度も出てきた話ですが、コテ先温度は重要です。
共晶ハンダではある程度ごまかしがきいたのですが、鉛フリーハンダを
使用するようになって、かなりシビアになりました。
鉛フリーハンダを使用したり、母材が大きくなる、グランドパターンに
つながったパターンなど、ハンダが溶けにくくなると、一般的にコテ先
温度を上げて早く溶かそうとする方が多いです。
しかし、コテ先温度が350℃より高くなってくると、コテ先に触れて
いるハンダの温度が急激に上がって、フラックスが瞬時に蒸発するので
ミニ水蒸気爆発を起こします。
すると、フラックスといっしょにハンダボールが飛散しやすくなります。
同時にフラックスの蒸発が早くなるため、フラックスが働く時間が短く
なりイモハンダが発生しやすくなります。
さらにフラックスの活性化温度の限界を超えてしまうため、フラックス
の焼け付きが起こります。
また、コテ先が酸化するのが早くなり、コテ先を掃除しても数秒で酸化
膜がコテ先を覆ってしまうようになるため、作業効率も著しく落ちてし
まいます。
したがって、ハンダが溶けないと感じた場合は、安易にコテ先温度を上
げず、まずは
1:熱容量の大きなコテ先に変更する。
2:糸ハンダを細くする
3:プリヒーター等を使用して 母材を予熱する。
4:窒素ガスフロー ハンダコテを用いる。
(200℃程度の窒素ガスが酸化を防ぎ、同時に余熱もできる)
※現在、デモ機を用いて実験中・・後日インプレッションします。
などの方法を試してみる必要があります。
ただし、前回お話したように、コテ先がピカッと光っていてハンダに濡
れることは前提条件です。コテ先が黒くなってハンダが弾く状態ではハ
ンダコテは熱を供給することができません。
(点接触になってしまうからですね。)
コテ先は銅棒に鉄メッキした上にハンダメッキが施されていますが黒色化
したコテ先は
1:鉄素地にフラックス残渣や炭化物が焼きついている。
2:鉄素地が高温酸化している。
3:鉄とスズの合金が酸化している。
4:ハンダのスズが酸化している。
を複合していることが多く、特に鉛フリーハンダでは起こりやすいです。
(共晶ハンダで鉛が酸化防止の役割を果たしていた)
※HAKKO ソルダリングアートより引用)
さて、温度調節機能の付いた高級なハンダコテでは、コテ先温度が表示
されるようになっています。
たいへん便利な機能なんですが、コテ先が磨耗してきたり、コテ先を交
換したりするとかなり誤差が出てきます。
つい先日も当社のハンダ付け職人の1人が
「このコテ先 1時間でダメになった!」と申します。デジタルの表示温度は
350℃を示していましたが、コテ先温度計で測定すると 400℃を越えて
おりました。
それで、コテ先が黒色化してしまったわけなんですが、このように最新のハン
ダコテでも50℃近く誤差が出ることもあります。
そこで、コテ先温度を正確に知るには【コテ先温度計】を使います。温度セン
サー部分には熱伝対が使われており、交換も簡単です。作業の前や、ハンダコ
テ作業に異常を感じた時は測定する習慣をつけましょう。
温度調節ステーションのデジタルの表示温度を鵜呑みにしてはいけません。