☆質問

はじめまして、早速ですがお聞きしたい事があります。
共晶半田にて半田付けした製品について、鉛フリー半田を使用しての修理
を行なった場合問題があるでしょうか。ちなみに半田付け製品は、金メッキ処理のコネクタ端子・
プリント基板のパタンなどにリード線を半田付けする作業です。

半田付けは全て半田コテを使用した手半田で、使用するコテは修理専用コテとし、通常の
鉛フリー半田付け作業時には、鉛フリー半田専用コテを使用します。
鉛フリー半田完全切り替えまでの間、又は切り替え後の修理品について問題なければ
鉛フリーハンダにて修理を出来ればと考えております。
よろしくお願いします。



☆回答

まず、RoHS対応ではないという前提ですね。
そして、鉛フリーハンダに鉛が微量ですが混入するので
影響が0ではないのでお薦めはしませんが、よくありがちな事例ですね。

以前、ブログで紹介したのですが
はじめに、ハンダ付けされていた共晶ハンダを全て除去してから
鉛フリーハンダ付けすると仮定すると
コテ先を共晶ハンダで使ってから、鉛フリーハンダに使用するのと
似たような状況になると思います。
(鉛の残存状況からすると)

以前の記事から抜粋しますと

鉛フリーハンダに鉛が混入した場合に起こる不具合については2種類あって

 ひとつ目は 表面実装で半田付けした基板に リード部品などを実装して フロー半田
( 半田槽など)した場合、 表面実装半田の時点では 完全に半田の合金層が形成されていても
「半田の剥離」という現象が起こることにあります。

 この剥離の発生の条件については
 ⅰ: リードメッキが 鉛入り共晶半田(Sn-Pb)である
 ⅱ: フロー半田付け時( 半田槽)の 表面実装部品リードの 接合部の温度が175度c以上ある
 ⅲ: 比較的 大型の 表面実装部品である

の3つが すべて揃う必要があります。

メカニズムについては 難しいので簡単に書くと
① 表面実装のリフロー半田付けの時点で メッキに含まれる鉛が 溶け出して
部品のリードの接合部表面に集まってくる。  ( 偏析といいます・・)
② この鉛は 鉛フリー半田(Sn―Ag-Cu)との合金を形成します。
( Sn―Ag-Pb 3元合金 融点178度c )
 ③ フロー半田(半田槽)で 温度が175度cを超えると この合金層だけが溶けます。
③ 熱膨張などによる 基板の反りなどで 応力が発生し 剥離に到る。

というものです。


ふたつめに やはり 部品リードに鉛入り共晶半田(Sn-Pb)をメッキした部品を
スルーホール基板で フロー半田(半田槽)した場合に 起こる 「リフトオフ」 と呼ばれる
フィレット剥離 があります。
 この現象は 上記の Sn―Ag-Pb 3元合金 融点178度cが 部品面側の
基板との接合部に 形成されるのは同じで この部分だけが 融点が低く 最後まで
液層になっているため やはり 基板の熱膨張による応力によって 剥離します。
 ただし スルーホール基板でしか 発生しないため 片面基板では 起こりません。

ということで 今回のケースでは深刻な不具合に直接結びつくケースではないと
いうことになります。

ただし、Bi系の鉛フリーハンダでは、鉛の偏析が起こると
部分的に融点が100℃近くまで下がってしまうので
高温になる環境では信頼性が著しく落ちてしまうので注意が必要です。