こんにちは、はんだ付け職人です。
AIやロボットがあらゆる分野で活躍する時代になりました。
量産ラインでは、機械の精密さも再現性も、人の手をはるかにしのぎます。
実際、私も業務では日々生成AIのお世話になっています。
それでも――
どうしてもロボットには任せられない領域が、はんだ付けの現場には確かに残っています。

■ ロボットが苦手とする “誤差の世界”
はんだ付けの難しさは、目に見えない揺らぎや個体差の中に潜んでいます。
職人の目が追っているのは、たとえばこんな要素です。
基板パターンによる熱伝導の差(熱の逃げ方)
同じ温度設定でも、銅箔の幅や層構造で熱の回り方が全く変わる。
母材表面の酸化度合いによる“濡れ”の違い
酸化膜の厚さや質のわずかな差が、はんだの馴染みを左右する。
フラックスの活性化時間とはんだの濡れ広がりの見極め
加熱が短すぎても長すぎてもアウト。1~2秒の違いで仕上がりが変わる。
融けたはんだの“挙動”から読む温度の状態
光沢、流れ、表面張力の変化――温度計ではなく“表情”で判断する。
基板と部品の接触状態から決める、加熱ポイントの最適位置
浮き・反り・当たり具合によって、熱を入れるべき場所が数ミリ変わる。
対象物から逆算して選ぶ、最適なハンダゴテとコテ先形状
細すぎても太すぎてもダメ。熱量と形状のバランスを事前に読む。
これらはすべて、一つとして同じ条件が存在しないはんだ付け現場ならではの要素です。
そして、わずかな違いが仕上がり全体に影響する、いわば“誤差の世界”。
ロボットは「決めた条件を正確に繰り返す」ことは得意ですが、
試作・開発・改造のような“一点もの”には即興対応ができません。
その場で変わる要素を読み取り、瞬時に判断を変える――
この作業は、今のAIや自動機にとっては非常に難しい領域です。

■ 職人の価値とは、判断力と観察力
私たちはロボットと張り合っているわけではありません。
むしろ、ロボットや自動機が活躍するための“前提”を作るのが、私たち職人だと思っています。
未知の材料、試作品、特殊用途の部品。
量産前の難しいステージほど、人の判断力と経験が求められます。
失敗から学んだこと、失敗を防ぐために積み重ねてきた工夫。
そうした“引き出しの数”こそ、はんだ付け職人の技術を支える土台です。
技術がどれだけ進化しても、
はんだが「流れたい方向」へ自然に動き出す、その一瞬の変化を読み、
手でそっと整える感覚は――人間にしかできません。
ロボットに任せられる部分は、どんどん任せていい。
しかし 試作・開発・改造の現場は、これから先もしばらくは職人の仕事であり続けます。
お読みいただき、ありがとうございます。
今日も明るいはんだ付けを!








